原発・ロボット創造・実写版パトレイバー | やぎおインフォ  
   
               
   

原発・ロボット創造・実写版パトレイバー

広瀬茂男著『ロボット創造学入門』を読みました。岩波ジュニア新書という、若年層向けのシリーズですが、大人が読んでもためになるタイトルが多いので、ぼくはけっこう注目しています。この『ロボット創造学入門』はそんな1冊で、ロボットのあり方を考えさせられる良書でした。

ロボット創造学入門 (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ)ロボット創造学入門 (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ)
広瀬 茂男

岩波書店 2011-06-22
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詳しくはぜひ本書を読んでいただきたいので説明しませんが、ぼくは「地雷撤去ロボットについて」「人型ロボットの必要性について」のふたつについて、とりわけ感慨深く思いました。

圧巻はあとがきにあった臨界事故後のエピソード

本編を読み終え、上記2点をきっかけにぼくの中にある常識は塗り替えられました。そんなすがすがしい読後感に浸りつつ、あとがきを読んでいて、実はこのあとがきにこそ、本書最大の論点が隠されていることに気づきました。

1999年、東海村JCOの臨界事故後のエピソードです。事故を受けて、国が補正予算を用意し、極限ロボット開発に着手することになったものの、企業に開発させた6台のロボットを国の評価委員会が性能不十分として廃棄させたというのです。

もしこの開発を続けていれば、2011年の東日本大震災後に、日本のロボットが活躍していた可能性は……高いと言わざるをえません。でも当時、現実には日本にはめぼしいロボットの用意がほぼない状態でした。外国製ロボットが先に施設内に入っていくニュースを見た記憶すらあります。

あの時、国のプロジェクトで開発を中止せず、予算を継続して割り当て、地道に改良に改良を積み重ねていけば、日本のロボット技術力であれば、かなりの成果を生む極限での作業ロボットができていたに違いないと、本当に残念な気持ちになりました。そもそも、原発のような施設に作業ロボットを配置するというプロジェクトが真剣に立ち上がっていれば、自然災害による被害のシミュレーションももっと慎重に、科学的に行われていたのではと、次々に考えが浮かんできます。

パトレイバーが活躍する未来は来ない、かもしれない

このことを考えていて思い出したのが、実写版パトレイバーこと『THE NEXT GENERATION パトレイバー』です。
Twitterを中心に、本作のための「98式イングラム」実物大模型の写真が出回り、ちょっとしたお祭り騒ぎになりました。いえ、もちろん、これは完全な機構を備えたロボットではないことはわかっています。ですが、そうしたロボットや周辺の技術が現在、ASIMO、古くはAIBOなど、エンターテインメントの一部として注目されているのは事実で、このパトレイバーの模型への注目のされ方もそれらと同じであるはずです。

そして、本書の論旨によると、パトレイバーが実物大で完全な機構を備えた警察ロボとして活躍する未来は、とてもじゃないが実現不可能。仮に可能になったとしても、超非効率的な代物になる、ということです。愛着が湧くとか、警察のアイドル的、アイコン的存在としての役割を果たす可能性はあっても、人間を助ける機械としては活躍しない、という見方です。

日本のロボット産業は世界に誇る技術力を持つと聞きます。であれば、その力をまずエンターテインメントのために使うのではなく、人間を助けるもののために使うべきでしょう。民間企業が慈善的にそれを行うのは、規模として無理があるんです。だからエンターテインメントのロボット止まりなんです。国が本腰を入れる以外に方法はありません。

原発の技術を世界に輸出してGDPを上げることを考えるのではなく、非人型の作業ロボット開発にもっと予算を割き、それらを世界に輸出してはどうでしょうか。そのほうがよっぽど世界のため、地球のためだと思います。

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